排泄は予防の元(はじめ)
今、健康問題を考える(六)
── 少量生産・少量消費のすすめ
「断食中は、われわれの心身活動のエネルギーを、外から取ることができないから、われわれの貯蔵した栄養から取らねばならぬ。そうすると、云わば蔵払いで、筋肉や内臓の隅々から栄養を引き出すから、身髏の全面に亘って、血液は隈なく循環するので、単に貯蔵された栄養ばかりでなく、滞留した種々の毒素も引き出される。而して隅々まで掃除が出来るのである。」(西勝造著・西医学断食法より)
供給を断たれれば、自らの力に頼るしかない。しかしそれは同時に自らの持てる力を再発見し、ひいては新しい可能性を生み出すことになる。
外から加わる力ではなくて、内なる力によって再生する。
さて“肉体の再生”は成っても、その仕上げは極めて困難なのです。
食を断つことで自然治癒力が最も効果的に働く反面、間違えば、いわば両刃の刃で、再生の喜びも束の間、思わぬ不覚をとることになります。
「断食によって、胃腸は収縮し、その消化吸収の機能は回復する。そうすると、多量の食物は、必要ないのである。して見れば、断食後に胃腸の回復したのに任せて従来の量又は、それ以上の食量を取ることが、胃腸を過労させ、数カ日を以て、もとの黙阿弥たらしむる所以ではないか。」(同著より)
再生を失敗に終わらせないために最も必要なことが、日々の“腹八分”の心がけなのです。
その時になったらやる、というのではなくて、やれる時にやる。それが“再生”につながる道なのです。
しかし私達はいつもこの“心がけ”を怠ってしまうのです。
私達は知らぬ間に“つめこみ教育”をやっているのではないでしょうか。
つめこんだ知識の量で優劣が決まる社会です。しかし私達はコンピューターではなくて人間なのです。
私達の生活にも、社会の生産活動にも“腹八分の心がけ”が必要になっているのではないでしょうか。(H)
第8号 1984年8月20日