「土と腸」三保製薬研究所物語(十一)
── 農薬も使い方次第
○農業なら何でも農薬、医療なら何でも医薬という風潮がありますが、この点はどうお考えでしょうか。
●果樹にしても野菜にしても、農薬を全然使わないのが自然の農作物の作り方である、という考えであれば、農薬はいらない。ところが、実際は病気を予防する予防剤、駆虫剤なしでやっていけるかどうか、そこが問題だ。今日でも、とかく問題となるのは、そこだ。しかし、それは農薬の使用方法の問題だ。農薬の種類、農薬の使用技術にかかわる問題である。そこを今後考えていかなくてはならない。 農薬だから、害虫を殺すという長所がある。他面においては、農薬なるが故に、ミカンにも農作物にも害を与えるということもある。そこは、差し引きして長所の方が多ければよい。
──状況を見分ける
●しかし、害虫の習性でもあるんだが、時の天候なり、地勢なり、いろいろの条件によって発生したり、しなかったりすることがある。 例えば、ヤノネカイガラ虫が発生すると、一年おけばミカンは枯れてしまう。ところが、この程度の発生ならば、農薬は使用しなくても大丈夫という場合は使わない。 ここの甘夏ミカンを見ても判る。害虫がでた枝がある。その枝をくまなく見ると、確かに害虫がでている。しかし、それのみを考えると全体に薬剤撒布をしなければいけない。けれども、実際、撒布をしているかというとしていない。もし、万一蔓延するようであれば、薬剤撒布をしなければいけない、ということになる。害虫を心得ている人ならすぐ判る。それの見分けをする必要がある。ただ農薬に反対するという考えでは、視野が狭い。害虫というのは自然に発生してしまっているのだから、どうすることもできない。その度合いをよく考えて、差し引きしてプラスであれば農薬をどんどん使う。
──自然の理を補助する
●自然を利用し、長所を伸ばし、短所を消すという考えでないと自滅してしまう。無農薬がよいという素人考えでは、農薬はいらないということになるが、そうではない。自然の病害虫は自然の状況によって広がる。又、自然の状況によっては無くなるということがある。敵虫(天敵)をつかうというのはそれだ。
○農薬はそれを補助するということなのでしょうか。
●そういうことだ。
(To be continued)
語り手 花澤政雄(三保製薬研究所 創業者) 1982年2月15日