「土と腸」三保製薬研究所物語(十九)
── 広範な学問から
○西勝造先生はその当時の医学とは全く違った考えで西医学を発表されたわけですが、そのあたりの想い出をお聞かせください。
●西先生のおっしゃる事は、初めから一般向けの話ではなかったね。あれだけ大きな西医学の発表なだけに違っておった。だから非常に興味を持った。西先生が、何がどういうふうに違っていたかを考えてみると、勉強しているだけに着眼点が違うんだ。しかも広範囲の勉強だ。学問の範囲が広かったことが、西先生を拡大したと言えるだろう。
片平七太郎さんのことは、前にも話したが、この地方で片平さんほど、勉強した人は少ない。勉強しただけに物事に批判的だった。その片平さんが「西先生の言う事には感心するのみだ。何かの話の中で、おかしな事があったら、逆を突っ込んでみたいと思ったが仲々ない。たまたまあって質問してみても、すぐ感銘してしまう。これは大変な人だ。」と言っておった。
──生活に密着した医学へ
○前回、人間生活に密着したところから西式健康法が編み出されたというお話をお聞きましたが、具体的にどういう事かお聞かせください。
●例えば朝食廃止という事だが、夕食後、夜間は寝る、つまり休養(断食)している訳だ。この間頭が休んでいる。したがって内臓諸器官も休養している。朝、目覚めてから、体が十分に活動できるようになる頃、つまり太陽が一番高い位置になる頃まで食べ物は控えた方がよいということだ。
世界的に朝食のとり方を調べた西先生によると、食べ物に後れた地方の人は朝食べない。どちらかというと、進んだという生活をしている人の方が、朝食べる。自然の状態ならば、食べたくないところを、体を動かすのだから食べた方が良いと考え、知恵を働かす。それに慣らされる。習慣になってしまうんだね。それが今日の概ねの人達だ。
それから、ただ朝食をとらないというのではだめだ。朝、柿茶なり水なりを十分とらなければならない。九時、一〇時あるいはお昼頃の小水が、無色透明にならなければならない。黄色いというのは、毒素が出ているからだ。水を十分とると無色透明になってくる。しかし、一気に飲んではまずい。腸内を素通りして早く小水になってしまう。少しずつ、舐めるようにして時間をかけて飲むと体に吸収される。ここで初めて毒素を集め出す。水の効果というものが、非常に上がる訳だ。
(To be continued)
語り手 花澤政雄(三保製薬研究所 創業者) 1982年2月18日