排泄は予防の元(はじめ)
今、健康問題を考える(九)
── 科学・細胞は自立している
たとえば血管がつくられる過程を考えてみよう。そこでは個々の細胞が自主性をもって行動するため、大動脈から毛細血管までの複雑なネットワークが形成される。
つまり細胞のそれぞれが個性と能動的な選択能力をもつ自主的な存在だということである。
そして相互の「情報」を感じるという性質を持っているため、まわりと協調的に働いて、自然に秩序を生み出しているくことができる。
からだの中の組織とは、そのような細胞が共同的に振舞っている細胞の集まりである。 (清水博『ホロンとしての人間』より)
同じことが、組織と器官、器官と人間、人間と生物種(社会)との間にも成り立つというのです。そして、それぞれ相互依存の関係にあって、最後には「生きている地球」を最終的な全体と考えることができるというのです。
「対象の分離と分析(還元主義的)の科学」観からの反省に基づく新しい生命観であるというわけです。
では今日、人間と「生きている地球」は相互に依存し合う関係にあると言えるでしょうか。否です。
とくに一九七〇年代以降の環境汚染や自然破壊は、人間の活動が地球上の秩序から分離されて極限まで行き着いてしまった結果であるといえます。
人間はもともとガン遺伝子的存在であり、欲望と競争と分離が渦巻く人間社会は有毒ガス体であって、この有毒ガス体が人間のガン遺伝子を益々刺激して、地球をガン病に追いやってしまっているとしたら言い過ぎでしょうか。
からだの正常な細胞においては、細胞とガン遺伝子は共存しているのです。ところが自由な自立した「個」である細胞であっても、ガン遺伝子を刺激する有毒ガスがあればガン細胞になってしまうのです。
私たちはからだの有毒ガスと同じく、人間社会に有毒性を取り除く努力をしなければと思うのです。(H)
第11号 1985年3月1日