往時雑感
“水 再考”(一)
《資源としての水》
── 水は天から貰い水
二月二〇日、清水市の給水制限は解除された。春の訪れを告げる南風が慈雨をもたらし、芽吹きを待ち構えていた木々にも精気が甦った。
昨夏以来の雨不足も一因して、水源興津川から表流水が消え去った。鮎釣の名勝、興津川は一度死んだのである。恵の雨によって川に水は戻ったものの、天然鮎の戻る日はいつのことであろうか。
思い起こされるのは、東京オリンピック目前の’六四年八月。首都は「東京砂漠」と化した。小河内ダムは、湖底が露出し、貯水量はあと一日、都市機能マヒは直前にあったという。奇跡の雨が降ったのは八月二一日。巨大都市の脆さと共に、いかに進歩した科学技術といえども自然のサイクルを無視しては存在し得ぬという事実を示してみせた。天を呪った者は、天に感謝すべきであった。
「波照間の一年の計は、水に祈りを捧げることからはじまるのだ。簡易水道ができた今も、天水をため、天水を大切に使っている家が多い。雨の貴さ、水のありがたさを知り抜いている人々の知恵だろう。」(1985年1月1日 朝日新聞 天声人語)
── 水不足は伝来技術喪失の代償
豊かな水資源に恵まれた日本という定説は崩れつつある。明治以来、日本の近代化の歩みは、豊かな資源としての水を次第に手放しつつ歩んだ歴史であった。
水源は蛇口にあり、という感覚は、私を含めた都市生活者の率直な感覚ではないだろうか。それは一つの神話でさえある。そして、この感覚を支えているものは、コンクリート文明に象徴される土木技術への絶対の信頼である。
「いま、都市づくりの大勢は“いかにして雨水を捨てるか”を目指している。コンクリートの上に降った雨は、豊かな地下水になることなく、下水に流れ込む。使い捨てどころか、使わず捨てである。時には下水洪水が起こって道路が水浸しになる。」(1985年1月13日 朝日新聞 天声人語)
日本の大地は天水という資源を貯える機能を次第になくしつつある。貯水という土地機能の喪失は、千年来の治山・治水の技術を喪失することでもあった。
── 水利の問題は文明・文化の問題
伝来の技術は何に取って替えられたのか。その事によってそのような変化がもたらされたか。水利をめぐる過去と現在は、文明社会の未来にとって避けがたい課題を突きつけている。
ところで、古代エジプト文明が砂漠の中で生まれたなどと考えるものは誰もいない。ナイルの沃野と共に発達した古代文明が、何故に砂漠の中に取り残されたのか。ピラミッドの遺跡を通して、水と土と緑がどう変わっていったのかを解く事である。
大きなテーマの一端を解きほぐし、共に考えていく素材になればと思う。(S)
スイマグの飲みやすい方法はありませんか
“ご質問を戴いて”
私も子供の頃は、母親に「スイマグを飲みなさい」と言われて逃げ回ったものです。
「飲まないとまた寝ぼけるよ」とか「ちょっと口が臭いよ」とか「糞詰まりなんですよ」と、子供ながらその語風の悪さを感じ、渋々飲んだものです。
その人間が今、スイマグの製造に携わっているのですから「もっと飲みやすい方法を」というご質問のお気持ちはよくわかるのです。
ただ、どうも体調の悪い時、より飲みにくく感ずるようです。スイマグは本来無味無臭ですが、人によって臭いを感じたり、口に酸っぱさを感じます。しかしそのいずれも私の体験からですと、お腹の状態が良くない時です。それで一つは、調子が悪くなる前に一度スイマグを飲んでおいてください。又は定期的に飲んでみてください。
しかし「調子が悪くないのに、わざわざスイマグを飲むわけがないでしょ。」とおっしゃる方もおられると思います。
その時はスイマグを薄くして、より水を十分飲んでみてください。濃度を薄くすれば飲みやすくなります。なれたら適宜増量してください。又児童の場合は、牛乳の中に溶かしたり、カルピスやヨーグルトのようなもので割ったりしてやってみてください。
勿論生水で薄めて、生水で口直しすることがベストですが、それができるようになるまで段々にやってみて戴きたいのです。(H)
編集後記
▶︎「“わが市”のイメージを表すことばで、一番多く使われているのは、①緑である。以下②豊かな③活力・活気④自然⑤心⑥住みよい⑦水⑧調和、と続く。」(1985年1月22日 朝日新聞 天声人語)
▶︎どれをみても、なくなりつつあるものを代表しているようだ。
▶︎なくしてはいじめて大切さが思い知らされる。取り返しがつかぬ前に…とは誰しもが考えるのだろうが。(S)
第11号 1985年3月1日