往時雑感
Iさんのお便り
Iさんには昨年八月の群馬での健康合宿でお目にかかりました。以来親しくさせて戴いております。
十一月に戴いたお手紙ですが、三保通信に転載させて戴きたいとお願いしたところ、快くお許し下さいました。Iさんにお目にかかれたことは大変うれしいことでした。
“生命がとても大事”
あたたかい日が続き、うれしいこの頃です。庭の菊を家の中のあちこちに飾り楽しんでおります。本当に“花ほど美しいものはない”などと思いながら・・・。晩秋の庭に咲くアジサイやバラも大好きです。寒さが肌にしみるような頃なので余計に、いとおしく思えるのかもしれません。
同封いただく印刷物やお手紙をうれしく拝見しております。ありがとうございます。心なごむお便り、感謝いたします。
奥蓼科に来られた由、山や谷の深さにびっくりなさったことでしょう。冬の寒さも、夏の涼しさも格別です。お目にかかれず残念でした。
私は、今年の一月微熱が続き、ベーチェット病と診断されました。何年か前から扁桃腺の熱が時々出ており、昨年十一月に手術を受けました。その後の発熱でした。今までまったく健康に過して来たので戸惑いました。病院に勤めながら、どうすれば良いのかわからず、主治医が出してくれる薬の効果の無さが加わり、途方にくれました。
そんな時、西式の健康法の事、甲田療法の事を教えてくれる人があり二月から食事の注意を始めました。四月より二ヶ月近くT市の国立病院に入院し、本格的に甲田療法にとりくみ始めたのは退院後六月からです。合宿の時から薬をやめていますが大した変化もなく、血液検査の結果は入院中からまったく正常になり持続しています。食事療法や運動、スイマグのおかげと感謝しております。
西本先生の指示を一生懸命守って・・・と思いつつも、さまざまな誘惑(主においしい物を食べたい、運動をサボりたい・・・)に苦しみます。ごちそうを作って食べるのが大好きだったので、記憶や目からの誘惑などからぬけ出すのに苦しみます。
一ヶ月に一度T市の病院まで検査を受けに行くのですが、経過が良いので主治医が喜んでくれています。薬をのまないことは先生にはお話していないのですが、ずっと言わずにいようと考えています。
病を得て、今まで見えなかった世界が見えてきたように思います。まず病院に勤めながら、患者さんの気持を、なんてわからずにいたのかと反省させられました。四月頃は、このまま死ぬのかと思ったことがありました。でも死ぬのかなと思ったとき、“絶対に生きたい”と思いました。生命がとても大事になりました。仕事もできるようになり、今ずっとずっと生きたいと願っています。自分の生きざまについても、なんて生意気に生きてきたことかとくやまれ、父、母、きょうだい、友人達の心のあたたかさがなんてありがたいものか身にしみてわかり、後悔と感謝の涙をたくさん、たくさん流しました。
患者さんから持ちかけられる相談に対して、以前とは違った心で、一生懸命になっています。
そんな訳でお話など、うかがいたいことばかりなのです。何があっても何ができても病気では、不健康ではなんにもならない、人は助けあわなければ生きていけない、ということがよーくわかりました。スイマグをお造りになる大切な、尊いお仕事どうぞ健康にご注意下さり、がんばっていただきたく思います。
つまらぬことを沢山書き、すみません。お読みいただきありがとうございます。
八ヶ岳にも、浅間山にももう雪が降りました。冬仕事に忙しい佐久平です。
十一月十日(日)夜 I
編集後記
▼新年あけましておめでとうございます。旧年中は皆様には大へんお世話になりまして有難うございました。御礼申し上げますと共に、今後一層の努力をして、皆様と共に歩ませて戴けますようお願い申し上げます。
▼「Iさんのお便り」の中でIさんは語っておられました。病を得て学び、そして自立の道を選ばれて、保健婦さんのお仕事に新たなお気持で、とりくんでおられます。清水の地より、声援を送りたいと思います。
▼『学ぶこと変ること―写真集・教育の再生をもとめて―』の著書である林竹二先生は「学んだことの唯一の証しは、何かが変わることだ」と語っておられました。自分の中の何かが変る、自分の向いているその向きが変る、そのことを楽しめるように生きたいものです。(H)
第16号 1986年1月1日